イノーバのコンセプトモデル/考え方① 改正省エネルギー基準の不条理

改正省エネルギー基準(平成25年基準)の不条理

平成25年1月に公布された改正省エネルギー基準では、建築物の外皮性能と一次エネルギー消費量を指標として、建物全体の省エネルギー性能が評価されることになりました。
住宅においては熱損失係数(Q値)から外皮平均熱貫流率(UA値)へ、夏期日射取得係数から冷房期の平均日射取得率へと指標が大きく変更されました。また、住宅における一次エネルギー消費量については、今後はすべての住宅が対象となります。

これだけ聞くと、新基準ではどれだけ住宅に要求される性能が上がっているのだろう?と思われるところですが、じつは外皮性能値についてはほとんど平成11年(次世代省エネ)基準のままのレベルです。
14年もの時が経ったというのに、これは一体なぜなのでしょうか?
答えは外皮性能(建物の箱としての性能)を包括する一次エネルギー消費量の削減を目的としているからです。簡単にいえば建物の性能はそこそこで良いので、冷暖房や給湯機器、それに照明器具などの高効率化による方法で化石燃料の消費を減らそうということです。

もちろん外皮の性能を強化すれば冷暖房不可も軽減されるわけで、それによって一次消費エネルギーを削減するというのが本筋だと思うのですが、建物の性能を今より上げるには技術的にハードルが高すぎる、またはそれを達成するためにコストがかかりすぎると考えている人たちが大勢いると思われるのです。さらに高効率設備機器の採用で数値がクリアできるならば、それらを製造するメーカーにとってはまさに大きなマーケットが出現するわけで、産業の活性化のためにその方面の声も無視できないという事情もあるのでしょう。

結果としてこれからさらに数年あるいは十数年の間、平成11年基準と同等の「低性能な」住宅が大量に建築され、「少しだけ」エネルギーロスが減った設備機器を使って人々は「本当の快適を知らずに」生活することになるわけです。